山と金麦

山と酒、漫画に文学。雑多な日常。備忘録。

都心に雪、ペンギンからチーター

 

年に一度の都心での積雪、首都機能が一斉に麻痺し始める。

 

ゴジラが来襲するかのような勢いで、アナウンサーが雪の来襲を声高に報道する。八王子駅前は壊滅、新宿駅は帰宅難民に溢れ、毛利庭園は雪に踏み潰されていく。画面は雪に怯える都民で溢れかえり、スリップした自動車が路肩に積み上げられていく。

 

年に数回もないのだ、どこも雪の対策はおざなりになってしまう。

 

そしてこれは悪夢の始まりに過ぎない。

降り積もった雪は溶けて氷となり、通勤通学の都民を容赦なく滑らせる。そして容赦なくその醜態をNHKが全国放送する。末代までの恥であろう。

SNSでは雪国民からのアドバイスに溢れ大量の”いいね”を獲得するが、実践する都民は少ない。どんなにペンギン歩きが良いと雪国民から言われても、呼び名も歩き方もスタイリッシュではないためだ。いっそチーター歩きとかどうだろうか。2足歩行よりも安定するし。しなやかに4足歩行をするサラリーマン、牙を剥き威嚇するOL、傷を舐め合う小学生、チーター柄を着る大阪のおばちゃん。わくわくする。

 

雪かきをすればよいのだが、ここには住民の性格が色濃く出てしまうように思う。

自らの家のテリトリーを全て雪かきする者、玄関周辺の雪のみをどける者、全く雪かきをしない者。

たまに平均台のように細い範囲だけ雪かきをする者がいる。踏み外したら一巻の終わり、NHKに撮影され朝のニュースにて晒されるのが目に見える。全神経を張り巡らせ、対向者が来ないことを神に祈りながら進む。頭の中では『情熱大陸』のテーマが流れる。NHK職員は『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』のテーマソングであろう。そういうとこにNHKは厳しい。まぁとにかく歩きながらドキドキするなんて体験は、ここか戦場でしかそうそう味わえないのではないか。

雪が溶けきるまでの間、通りすがる者はみな、そこを雪かきした住民に思いを馳せる。この家の人は面倒臭がりなのだろう、この家はきっちりしている、なかなかぶっとんだ発想の家だなとか。そんなことを道行く人に思われていると意識すると下手に雪かきもできなくなる。これが雪かきのジレンマである。

 

どうやら明日また積雪があるらしい。首都圏は壊滅間近である。